My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
「…いいな」
「何が?」
「そんなふうに…一緒にご飯を食べられる人がいるの」
ただ共に食卓を囲むだけで笑顔になれる。まるで家族のような、そんな存在がいたなら、と焦がれたことがある。
ぽつりと無意識に零れた雪の声は、羨み憧れているようにも聞こえた。
「……じゃあ今度一緒に食べる?」
「え?」
「俺らと一緒に、飯。贅沢なもんは食ってねぇけど、あいつらと食べる飯は美味いぜ」
そう笑顔で誘うティキに、雪は思わず目を丸くした。
今は鎖で繋がれた、囚人である身。
"今度"なんて、そんな軽く食事に誘われるような立場ではないのに。
「言っただろ、自分の為に道を歩けって」
そんな雪の心を見透かすように、ティキは以前と同じ言葉を口にした。
「食いたいもんがあれば食えばいい。欲しいもんがあれば望めばいい。"思い"に制限なんてかけるなよ」
「……そんなこと言ったって…私にはティキの言う"道"が見えないよ」
自分の道を歩けと言われた。
しかし歩こうにも、その道が見つからない。
そんな状態でどう歩けと言うのか。
「当たり前だろ」
しかし雪の予想し得なかった反応をティキは見せた。
「親切に道なんて作られてる訳ねぇのに。見えてるもんだと思ってた?」
暗く呟く雪に対し、かけてきたのは優しい言葉などではない。
淡々と投げかける言葉は、冷たくさえも聞こえる。