My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
「大体ティキの好きなものって何」
「んー…煙草と博打と…生魚?」
「うっわ駄目な大人の必需品みたい。てか何故魚。何故に生」
「好きなんだよ生魚。特に鯉とか。あれ美味いぜ」
「刺し身ってこと? 鯉の刺し身なんて聞いたことないけど…」
「いや、そのまんま一匹丸ごと齧るのが美味い」
「…まじで」
「まじで」
真面目な顔でティキが頷けば、押し黙った雪の顔は胡散臭い者でも見るかのよう。
「んだよその顔。食わず嫌いは良くねぇぜ。一回食ってみろよ雪も、美味ぇから」
「……」
「その"何言ってんのコイツ"って顔すんのやめてくんない?」
「ティキだって前したでしょ」
「そだっけ」
「都合良く忘れる頭なんですかそっちが寧ろ忘れるんじゃないんですか」
「俺学ねぇからさー」
「そう言えば許されると思ってない?」
「ないない」
「……」
テンポ良く進む会話は、雪の再び胡散臭そうに黙り込む顔で終止符を打たれた。
からかっているとでも思っているのか。ティキを見る雪の目は、思いきり信用していない者の目。
しかし。
「はぁ……なんだっけ。煙草と博打と…魚?」
溜息をつきながらも、彼が口にした好物を思い出すように雪は復唱した。
「え?」
「……何その反応。好きなもの憶えろって言ったのはそっちでしょ」
「そうだけど…え?」
「だから何その反応」
「ぶふっ」
「なんでそこで笑う!?」
まじまじとそんな雪を見ていたかと思えば、顔を逸らしてティキは唐突に噴き出した。
何故笑われなければいけないのか、理由は皆無だがなんだか凄く羞恥を感じる。
近い距離に勢いのまま襟首を両手で掴めば、くつくつと笑いながらティキは大人しく両手を軽く挙げて降参の意を示した。
「ごめんごめん。やっぱ可愛いなーっと思って」
「はっ? 何が…っ」
「そういう変に真っ直ぐなところ。馬鹿真面目って言うか単純素直って言うか」
「褒められてる気がしないんだけど。何それ殴っていいってこと?」
「落ち着けって、褒めてるから。そして首絞まってるイタイイタイ」