My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
「やっぱドSか容赦なしか」
綻ぶ笑顔なんて一瞬のもの。次にはけろりと言い切る顔はいつもの彼で。
即答で突っ込みを入れる雪に、くつくつと面白そうにティキは笑った。
「だって憶えてて欲しいし。毎回起きれば記憶はさっぱりなんて、忘れられる身にもなれよ」
「…ぅ…それは…スミマセン」
(まぁ仕方ねぇけど)
ぐさりとティキの言葉を胸に突き刺し項垂れる雪を、まじまじと金色の目が観察する。
ノアであることを心が拒否しているから、記憶から弾き出されてしまうのだとワイズリーは言っていた。
(じゃあ…ノア関連以外なら憶えてんのかね…?)
人の記憶の在り方など、法則のないあやふやなもの。
そもそも法則があっても、難しいことなどわからない。
普段あまり使わない頭を捻りながら、結局は答えなんてないものだと早々にティキは考えることを諦めた。
その代わりに。
「じゃあさ、憶えておく為のおまじない」
「…おまじない?」
「そ。俺の好きなもん3つ教えるから、それ憶えてて」
「え…や、また忘れるかも…っ」
「そこは頑張れ。多少は努力しろ」
「ってS!」
(これなら別にノアのことだって自覚はねぇだろうし。憶えていられるかもしれないだろ?)
とは言葉に出さず、にっこりとティキは容赦なく提案を突きつけた。
まじないなんてまやかしの言葉だ。
雁字搦めに神田に縛られたその心を、少しでも別へと向ける為の。