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夕焼けの色、歓びの種。【西谷夕】

第16章 エピローグ


 「ヤバい!これマジで遅刻するかも!!」

 よりによってこんな大切な日に寝坊するなんて、と青くなりながら、日向翔陽は駅の階段を、一段飛ばしでかけ上がる。
 上りきったところで、傍らにある時計に目をやると、ちょうど針は約束の時間を指すところだった。
 「おせーよ!日向ボゲ!」
 改札を抜けた先で待っていたかつての仲間たちの中から、一番に影山の声が降ってくる。
 「なんだよ影山ぁ、セーフだろ!」
 結局同じ大学の推薦を受けたため、影山とは今でもチームメイトだ。
 けれど他のメンバーとは本当に久しぶりの再会だった。
 「日向、久しぶりだな!」
 「相変わらずちっちぇーなぁ」
 「ホラ行くぞ、お前ら。遅れちまう」
 思い思いの声が日向にかけられ、大地の言葉で全員の足が目的地に向かって歩き始める。
 かつて同じ青春を過ごし、共に戦った仲間たちだが、進む道は様々だ。
 進学した者、就職した者、既に大学を卒業して就職した先輩もいる。その中にはバレーを続けている者もいれば、卒業とともにやめた者もいた。
 だけど今日、こうして全員が集まった。誰も彼も、あの愛すべき我らがスーパーリベロを祝うため、それぞれが正装をしてここに集っている。

 「それにしても、西谷が大学卒業と同時に結婚するとはなぁ」
 高校時代から変わらぬ優しい物言いで東峰が言う。
 「ノヤっさん、高校卒業から年一ペースでプロポーズ断られて、今回就職決まったのを機に四年越しでオッケーもらえたらしいんスよ。」
 今でも西谷と親しくしているらしい田中が答える。
 「田中、嫁さんに会ったことあるのか?」
 「あ、ハイ、何回かあるっす。俺の姉ちゃんより年上っすよ」
 「あ、俺も一回会ったわそういえば。」
 「どのタイミングでだよ。つーかスガ、今日清水は?」
 「あんたたちと一緒だと、目立つし、遅刻しそうだから、先いってる。だって」
 「ちょ、大地さん、なんでスガさんに聞くんスか…まさか…まさか…き、ききききき潔子さんと…!」
 ノオオォー!と白目になる田中を放置して大地と菅原はスタスタと先を急ぐ。
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