第14章 夕焼けの色
その日、部活を終えた夕が、龍や後輩と連れ立って校門を出ると、みなみがそこに立っていた。
「みなみ!?どうしたんだ?」
夕の声に、はっと顔を上げたみなみは、彼が友人と連れ立っているのを見て、明らかにしまったという顔になる。
「ごめん!そっか、友達と帰ったりするよね、そりゃ…!む、昔すぎて忘れてた!あ、じゃ、また今度でいいや、てか、帰ってからでよかったよねゴメン!」
「あ、ちょっと待てってみなみ!」
顔を真っ赤にしてくるりと踵を返したみなみの腕をとっさに掴みながら、彼はぽかんと見ていた友人たちを振り返った。
「わり!俺今日こいつと話あるから!また明日な!」
口を開けてこっちを見ていた龍が、はっと我に返った顔をする。
「お、おう!んじゃな!」
「お、お疲れっした!」
「ノヤさんノヤさん誰ですかその人!お姉さんですかモゴ」
自身も好奇心丸出しの顔をしている割に、龍にしては珍しく理性的に、日向の口をふさぐとさっさと引きずって去っていった。
ノヤさあああああああん………と、遠ざかっていく日向の声が聞こえなくなった辺りで、掴みっぱなしだったみなみの腕を放す。
「で、どうしたんだ?」
「あー、いや、うーん……」
ここまで来て言いよどむみなみの顔に、自分の顔を近づけて覗き込む。
「ちょっと、近いから、あんたホント……」
朱く燃える夕焼けのせいだろうか。みなみの頬はどきりとするほど赤い。
自らの鈍感さには自信があったが、それでも、これまで夕の学校生活や友人関係に介入すまいと、神経質なほど気を遣っていたみなみが学校まで来るなんて、何か大切な話をしに来たのは分かった。
「あのね…こないだの、は…はなしなんだけど……」
黙りこくったままみなみの言葉を待つ夕に、観念したように口を開く。
伏し目がちのまつ毛が震え、目元に長い影を落としている。
「私、私が夕の恋人になったらさ……」
夕の目が微かに見開かれる。
「さっき、みたいに、お姉さんですかとか、言われちゃうんだよ…?」
一旦口を開くと、今度は堰を切ったように続ける。
「夕がこれからいくら大人になっても、私もそのたびどんどん年を取って、永久に年上のままなんだよ。」