第12章 さいごの。
「このあいだ、西谷が、あなたを諦める方法を教えてくれって、言ってきたんです。そういうこと普段絶対言わないやつなんで、おれめちゃくちゃビックリしたんですけど」
みなみが僅かに目を見開く。
「でも、俺、諦める必要ホントにあるのかって思って」
上手く言葉が出てこないのか、菅原はいったん口をつぐむ。
「ええと、ほんとに余計なお世話ですみません!でもアイツのあんな顔、初めて見たから、これだけは言っておきたくて!」
みなみは彼の次の言葉を待つ。
「アイツ、見た目ちっちゃいけど、気持ちは誰よりもでかいし、傍目で思うよりずっと大人です。
あいつ、ちゃんとあなたのこと好きです。だから、年齢を理由に断るのだけはやめてやってください。
そういうのとっぱらって、あいつ自身をちゃんと、見てやってください!」
そこまで言い切り、がばっと頭を下げる。
「ホントいきなり出てきて生意気ですみません!」
みなみは呆然と菅原の言葉を聞いていたが、最後の言葉を受け、ふわりと微笑んだ。
「いい先輩に恵まれて、夕が羨ましいな」
それから、みなみもぺこりと頭を下げた。
「ありがとう。私も、もう逃げるのはやめる。今日ここへ来てよかった。ちゃんと、考えてみます。」
スガ―――、と体育館から誰かが顔を出して呼び、ぺこりと一礼すると彼は戻っていった。