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夕焼けの色、歓びの種。【西谷夕】

第2章 おとなりの男の子


 西谷家と朝霧家は、おとなりさんどうしだ。
 さらに言えば両家の母親たちは、学生時代からの親友である、。
 だから、夕が生まれたその日から、彼女と彼は、姉弟ほど近く深く、毎日を一緒に育ってきたのだった。

 「みなみー!みなみみなみみなみ!!!」
 けたたましい声とともに、小さいカタマリ…もとい男の子が庭先に駆け込んでくる。
 「ゆう」
 じょうろを握っている手を止め、朝霧みなみは顔を上げた。
 夏休みも終わりに近づいているというのに、相も変わらず全力で照り付ける日差しに、少し目を細める。
 「でっかいバッタ!」
 「え?」
 「でっかいバッタがいた!なあ、行こうぜみなみ!」
 隣に住む元気な男の子、西谷夕の小さい体があっという間にみなみのそばへ転がり込み、期待に満ちたキラキラ顔で彼女を見上げる。
 「夕!待ちなさいったら、夕!」
 きーきー叱る声が聞こえたと思うが早いか、ぐいぐいと腕を引っ張られているみなみの視界に、息を切らしながら駆け込む女性の姿が入って来る。
 夕のお母さんだ。夕そっくりの丸い大きな瞳、いたずらっぽい口元をして、およそ子供がいるようには見えない。
 「夕、急に走り出さない!それに、みなみちゃんって呼びなさいっていつも言ってるでしょ!あ、こら!夕!待ちなさいったら!」
 おばさんの言葉を聞いているのかいないのか、特に悪びれもせず、夕はみなみの手を引っ張りながら庭を出ていこうとする。
 「おばさん、大丈夫。私ついてくから」
 「ごめんねみなみちゃん、お願いね!」
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