第1章 春はあけぼの
春眠暁を覚えず、とはよく言ったものだ。
程よく温まった羽毛布団に包まれて幸せを噛みしめる。
スマホのアラームはついさっき鳴ったはずだけれど、寒さに弱い私はどうしても布団から出られずにいる。
「おーい、春歌ー?起きなくていいのかー?」
布団の外からまだ眠そうなアクビ混じりの声が聞こえる。
「今日新曲の打ち合わせとか言ってなかったっけ?」
「……うぅ……わかってます。わかってますけどぉ……」
「寒くて起きらんねーの?」
あははっ、と笑う声。
直後に感じる布団の上からの重み。
「う……お、重い……」
翔くんは小柄だけれど、やっぱり男の子。
程よく鍛えられた身体は重い。
「今から10秒以内に起きないと、どうなるかわかる?」
「……はい???」