第19章 影浦 雅人の姉(ワールドトリガー)
「あ、マサ!
いいところに!
私、今手が離せないから村上君のお好み焼きひっくり返してくれない?」
「あ"あ"?」
厨房から出て来た菜々子の言葉に雅人は眉間にシワを寄せる。
そんな菜々子は雅人の様子を気にも留めずにさっさと厨房へと戻る。
雅人はチッと舌打ちすると村上達の席へとやって来た。
「どういう事だ?」
雅人が威圧しながら見下ろしてきて村上は目を泳がせる。
「えっと………その………」
「鋼、菜々子さんの焼いたお好み焼きが食べたかったみたいだぜ」
口籠もっていたら急な友の裏切りに村上は泣きそうになった。
「姉貴の?」
雅人は不思議そうに村上をしばらく見つめた後、察した。
「…………正気か?」
ゲテモノを見る目で村上を見る雅人。
そんな雅人のリアクションに荒船は思わず笑う。
「正気だよ………」
「マジか。
どこがいいんだあんな女」
「カゲ知らねぇのか?
菜々子さん結構人気だぞ?」
「趣味悪ィやつばっかだな」
(趣味悪ィやつ……………)
荒船に返した雅人の言葉にショックを受ける村上。
「それよりひっくり返さねぇと焦げるんじゃねぇか?」
荒船が村上のお好み焼きを指差して言った。
「あ、そうだった」
村上は慌ててヘラを握る。
「俺がひっくり返さなくていいのかよ?」
雅人がニヤリと笑って言った。
「自分でひっくり返すよ」
笑ってそう言った村上はお好み焼きをサッとひっくり返した。
「わ〜村上君、上手になったね。
あ、荒船君、こちら豚玉です」
荒船の豚玉を持った菜々子がタイミング良いと言うべきか悪いと言うべきか…………村上達の席へやって来た。