第19章 影浦 雅人の姉(ワールドトリガー)
「あ、ありがとうございます」
荒船は笑いをこらえながら礼を言った。
(もう今日はとことんついてない…………)
村上は泣きたくなった。
「これならもう私が焼かなくても大丈夫そうだね〜」
「えっ!?」
菜々子の発言に驚く村上。
「あ、あの………俺は菜々子さんが焼いたお好み焼きが食べたい…………です」
「あははっ!
さっきの森さんの真似?
村上君もそんな冗談言うんだね」
「冗談じゃないです」
村上が顔を赤くしながら真剣な表情で菜々子を見つめる。
その様子に菜々子はだんだん戸惑い始める。
「姉貴、あっちの客が注文とって欲しそうだぞ」
「え!?
あ、じゃあ行ってくるね!」
雅人の言葉に菜々子は慌てて伝票とボールペンをポケットから取り出しながら別のお客の元へ移動する。
「あ………」
村上が名残惜しそうに菜々子の後ろ姿を見つめる。
「姉貴が誰とくっ付こうが興味ねェけどよ。
せめて俺がいないとこで口説け」
そう言って雅人は村上を睨んで厨房へと移動した。
「どんまい鋼」
荒船は自分のお好み焼きの生地をかき混ぜながら村上に声をかけた。
これは余談だが、村上が菜々子にアプローチをかけようとすると何かを察した雅人が
「別に姉貴に用があるんじゃねェ。
鋼とランク戦の話がしてェだけだ」
と言って邪魔しに来たりする。
「カゲも素直じゃねぇよな。
菜々子さん取られるのが嫌なんだろ?」
「違ェ」
「鋼のどこが気に入らねぇんだよ?」
「だから違ェ」
「あ、そうか菜々子さんと鋼がくっ付いたら義兄さんになるのか鋼が」
「そんな日は絶対に来ねェ」
あの時のカゲの目は人を殺しそうな目だったと荒船は語る。
おわり
nextあとがきという名の謝罪