第3章 跡部 景吾の姉(テニスの王子様)
結局、練習を遅刻してしまった忍足は罰として外周50周を言い渡され、忍足が走り終えるとレギュラー陣の間で試合形式の練習へと移っていた。
「忍足、終わったか」
「バッチリ50周走ってきたで」
忍足に声をかけたのは菜々子の弟、景吾だった。
「しかし、お前が遅刻とは珍しいな。
何があった?」
「まぁ、話は長くなるんやけどな。
跡部のおねえさんが告白されとる現場に出くわしてな」
「姉貴の?」
忍足の口から出てきた意外な単語に景吾は驚く。
「めっちゃ酷いフリ方しよるから思わず口出してなぁ」
「ほぉー」
「そしたらその男、他校に彼女おってん。
それを跡部のおねえさん知ってたみたいで……。
余計なことをしてしまったわけや」
「当たり前だ。
この学園の男は跡部グループが総力をあげて調べあげて、最低な男をリストアップして姉貴に渡してある」
「そーか。
最低な男をリストアップして………。
って、なんやて!!?」
跡部の発言に驚く忍足。
「姉貴が変な男に引っかかったらいけねぇだろ」
「いやいやいやいや!!
そういう問題やないやろ!!」
「あーん?
何がおかしい?」
思わず頭を抱える忍足。
「姉貴は仕事はそつなくこなすが、そーゆーのは疎くてな」
「え?
疎いってそーゆー風には見えへんけど」
忍足の言葉に跡部がハッと何かに気づいた。
「悪い、忍足。
今の会話は聞かなかったことにしてくれ」
「どうしたんや急に?」
「この俺としたことがうっかり口を滑らしちまっただけだ。
気にするな」
ポンポンと忍足の背中を叩いて跡部は他の部員達の元へ向かった。
「なんやったんや?
口を滑らしたって………?」
残された忍足は訳がわからなかった。