第10章 真田弦一郎の姉(テニスの王子様)
もうお気付きの方もいるでしょう。
そう、切原に差入れを踏まれた女の子の名前は真田 菜々子。
見た目は幼く見えるが正真正銘、真田 弦一郎の姉である。
菜々子は学校近くの公園のベンチに座っていた。
(涙が治るまでここで休んでいよう………)
そう思いながら菜々子は、涙をハンカチで拭う。
幸運なことに、公園には菜々子以外、人はいなかった。
(幸村君に好きな人か………。
考えてもみなかったな。
差入れを作って弦一郎に渡すのが精一杯だったんだもの………。
でもあの人の言う通り、皆は自分自身で渡してるのに私は弦一郎に頼ってばかりで………卑怯よね。
でも弦一郎から幸村君が喜んでたって聞くだけで私は嬉しかった)
菜々子は踏まれてぐちゃぐちゃになった差入れを見ていた。
「失恋確定だ………」
掠れた声で菜々子は呟いた。
涙は一向に治る気配がなかった。
(幸村君のことは諦めよう。
諦めなきゃ。
幸村君には好きな人がいるんだもの。
諦めなきゃって思えば思うほど幸村君への想いが溢れてくるのはなんで………!?)
菜々子は顔を隠すように手で覆った。
「……ちゃん!
菜々子ちゃん!!」
遠くから自分を呼ぶ声がして菜々子は振り返ると幸村がこちらに向かって走ってきた。
菜々子は慌てて涙を拭う。
「幸村君……どうして?
部活中じゃ……?」
「真田から聞いて探しに来たんだ」
そう言って幸村は少し上がった息を整える。
「ごめん。
うちの部員が失礼なことをして」
深々と頭を下げる幸村。