第8章 目には目を
「っ、鶴丸さん?」
勢いに任せて抱き寄せるなんて自分でも馬鹿なことをしたと思う。だけど無駄に可愛いこいつも悪いと思うんだが、どうだろうか?だいたい佳乃は自分が女だと自覚してないところがある。気になる女に無防備に隣にいられて、むしろ抱き寄せただけですんだ俺を誰か褒めて欲しい。
そんなことを考えながら俺の腕の中で閉じ込められている佳乃を見ると、彼女は焦った様子も照れた様子もなく不可解だという顔をしてこちらを見つめている。
「鶴丸さん、取り敢えず何もしないのなら放してもらっていいですか?」
「あっ、はい」
あまりの言葉に思わず敬語で返事しちまったぜ。ちょいとこいつ、刀剣とはいっても年頃の女(の見た目)にしては冷めすぎじゃねえか?不満げに渋々俺が拘束を解くと、自由になった身体をほぐしながら佳乃は「覚悟はよろしいですか?」と刀に手を添える。はっと気づいた時にはもう遅く俺の意識はなくなっていた。
ちょ、覚悟、まだしてな…ッ!
「なぜいまここでせいざさせられているのかわかりますか?」
「さっ、さぁな?」
「とぼけてもむだですよ!佳乃からすべてきいているんですからね!」
ようやく意識が戻って早々、俺はプリプリ怒った今剣に詰め寄られていた。面倒くさいことになったと逃げようにも今剣の後ろには出口を塞ぐようにして岩融が仁王立ちしている。前の持ち主が持ち主だった故にその姿は無駄に貫禄があるぜ。冷や汗が止まんねえ。
「さて、ざいにんよ。にげることはゆるしませんよ!」
「ざ、罪人?!酷い言われようだぜ…」
「ざいにんです!あるじさまのじだいでは、鶴丸はせくはらでいまごろむしょにいれられていたことでしょうから」
今剣の発言に岩融が同意するように頷く。頷いてるけど岩融の野郎も俺と同じくらい、いや、俺よりも佳乃にベタベタしてると思うんだが。そう思って口を開こうにも、よほど怒っているのか今剣は発言を許してくれない。くそ、理不尽だ…!