第18章 中忍試験二次試験〜死闘〜
((…サスケ…!))
無数に出来た微かな切り傷の痛みの中、リエの脳裏に未だ意識の戻らない彼の苦しげな顔が過る。
愛する人を守ると誓った。
たとえ自分がどうなろうとも、彼だけは…彼らだけは守らないと。
その思いでチラリと視線をサスケ達がいる方に向けると、ザクは揶揄うようにこう口にした。
「なんだぁ?そいつが気になって仕方ないってか?この状況で余所見たぁ、肝が座ってんだが馬鹿なんだか。…いいぜ、こっちに集中出来るように、そいつから始末してやるよ!」
狂喜を含んだその言葉と共にザクは走り出すと、一瞬で距離を詰めたリエの脇を通り抜け、
眠るサスケやナルト、二人を守ろうと身体を強張らせるサクラの元へと向かっていく。
クナイを構えたサクラが、息を呑むのがわかった。
その瞬間、リエの中で様々な感情が膨れ上がってきた。
怒り
悔しさ
焦り
ーーー大事な人を失うかもしれない、恐怖。
「サスケに…皆に、手を出すな!!!」
そしてそれが、身体の内に留めておけないほどに大きくなったとき。
リエの意識は、飛んだ。
刹那、突風が吹き荒れ、ザクの足元をすくう。
バランスをとられたザクはそのまま宙返りをするように後退し、何事かとリエを振り返る。
ザクの目には、信じ難いものが映っていた。
彼女の周りを囲う大きな風の渦。
先程までの少女にはなかった、威圧感。
黄金の瞳から向けられる眼光は、威厳すら感じられる。
吹き荒れる風は、止む気配もない。