第17章 中忍試験二次試験〜死の森〜
鬱蒼とした深い密林の中
そこに生けるものの息づく音が耳を掠める。
ザワザワとざわめく木々が、まだ幼いメンバーの不安感を煽った。
耳をつんざくような絶叫が辺りに響いた。
もう誰か襲われたのかと、サスケは注意深く周囲に気を配る。
「な…なんか緊張してきた……」
不安を口にしたのはサクラだった。
雑多な物音や気配が轟くこの場所では、純粋にライバル達の動きだけを読み取るのも容易ではない。
「ど…どーってことねーってばよ、サクラちゃん!」
そうやった空元気を振舞うナルトの額にも、汗が滲んでいる。
プレッシャーから尿意が近くなるほど。
「…オ、オレってば…ちっと、しょんべん…」
「女の子の前でなんてことを!」
とサクラに怒られつつも、ナルトは木陰に身を隠したのだった。
そしてものの数分後。
「あー、すっげー出た~すっきりー!!」
と、ナルトは清々しい面持ちで姿を現した。
しかしその直後、ナルトを目にしたサスケの拳がナルトの左頬を直撃した。
リエもそんなサスケの行動に驚きはしたものの、地に倒れるナルトを見てサスケの意図に気づき臨戦態勢をとる。
「ナルトくんをどうしたの!?」
その言葉にサクラは眉を寄せる。
「きゅ、急に何……」
戸惑うサクラを余所目に、ナルトがリエを睨みつける。
それを遮ったのはサスケの指摘だ。
ナルトの手裏剣のホルスターの位置は逆。
試験前にアンコが彼に付けた左頬の切り傷もない。
そして本物のナルトならリエを睨んだりもしないだろう。
「テメーはナルトより変化が下手だな、偽者ヤロー」
特に落胆するわけでも、勝ち誇るわけでもなく、ナルトの姿は煙に巻かれた。
そして現れた正体はゴーグルにマスク、衣はまるで拘束着のようだ。
額当ては雨隠れの紋。
不気味な様相の男は開き直った風に、力尽くで戦闘を仕掛けてきたのだった。