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連れ立って歩く 其のニ 砂編 ー干柿鬼鮫ー

第3章 満身創痍


「このままでは報酬の回収どころか足が出る。そんな事になったら俺も無念さの余りお前の後を追いかねん。俺の為にもしっかりしろ、牡蠣殻」

「・・・ハハ、面白いですねえ、アンタは。私、この厄介な体を勿体ないとか損なうと損するなんて初めて言われました。・・・・可笑しくて笑ってしまった・・・」

「気を弱らすな。死期が早まる。それはいかん、断じていかんぞ、牡蠣殻」

「ハハハ、ヤバイ。い、今笑わさないで下さい・・・うぇ・・」

疲労と睡眠不足でものも食べていない牡蠣殻が、空えずきした。

「・・・見たような顔じゃの。そこのジジイ」

渋紙色の声がした。
角都がピクリと眉を上げる。

木陰から小柄な人影が現れた。
角都は目をすがめてその姿を認めると、渋い顔をした。

「・・・何故こんなところにいる?もう光合成は止めたのだろう?地中に帰れ、しわくちゃよ」

「誰がしわくちゃだ、口裂けパッチワークジジイ!若ぶっとるが貴様わしの及びもつかぬジジイだろうが!ああ?いや、よし、良かろう、わしは地下に帰る。だからお前は土に還れ!順番守れ!後がつかえとるんじゃ、バカタレが!」

「・・・相変わらずだな、チヨば・・・・うぐ・・・ッ」

小柄な人影が木立の陰から飛び上がり、角都の首に延髄斬りを決めた。

「貴様にババア呼ばわりされる覚えはないわ、この超絶ジジイめ!いい加減死にかけたふりでもして周りを安心させるがいいわ、アンポンタン!」

チャリと音を鳴らして、牡蠣殻が難儀そうにまた頭をもたげて人影に目をやる。

「いいか、わしを呼ぶときはおチヨさんもしくはおチヨ様じゃ!マジ貴様にババア呼ばわりされる覚えはないっつぅんじゃ、くそジジイ!」

おかっぱの老女がガンガン怒鳴っている。
折しも空を赤く染め始めた夕日が老女の背後から後光の如く煌々と辺りを照らした。

「ご・・・後光?・・・仏様・・・?」

「誰が死後五年じゃあァァァ!!!」

老女のチョップが牡蠣殻の頭頂部にガッツリ入る。

「バッ、貴様俺の財布に何をする・・・!!」

角都が色めき立った。老女はキッと角都を顧みて一喝する。

「こんな金の入れ辛い財布があるか!耄碌するのもたいがいにせえ!!」

「・・・あー・・・喧嘩は、やめ・・・」

赤い空の背景の中で老女が角都に飛び掛かる絵を最後に、牡蠣殻は落ちた。
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