第22章 わからないのが任務というもの
カカシは呆れ顔でガイにハンカチを差し出すと、サッサと歩き出した。
「コラ待てカカシ!抜け駆けは許さんぞ!」
「何が抜け駆けは許さないよ。何ならオタク一人で行ってくれても構わないんだけど?俺は帰って寝直すからさ」
欠伸混じりで言うカカシに、ガイが俄然張り切って目を三角にする。
「逃げるのか!」
「抜け駆けやら逃げるやら、随分忙しいねえ。落ち着きなさいよ」
上着のかくしに手を突っ込んで、カカシは立ち止まってガイを待った。
悪いね、波平さん。
立ち止まられた事に意外そうな顔で追い付いたガイを見ながら、カカシは底の知れない半眼を思う。
アンタの大事な人なんだよね。多分今でも待ってるんだろうね?
ガイと並んで歩き出して、カカシはスイと目を細めた。
争いの種は消すのが良手。縺れた糸は解くより断ち切る方が後生がいい。
綱手は牡蠣殻に会いたかったと言った。会えない事もない相手に。
「自分なりの解釈か・・・」
「何だ?何か言ったか?」
聞き咎めるガイにカカシは首を傾げて見せた。
「さあ、何か言った?俺?」
「言っただろ?」
「ふうん・・・」
カカシは頭を掻いて心持ち顔を俯けた。可笑しくもないのに口角が上がっている自分に気付いて、溜め息を吐く。
「駄目だね、歳取ると。独り言は増えるし、狡くなる」
「何を言ってるんだ。俺はまだまだ青春真っ只中だぞ」
「・・・長生きするよ、オタクは」
「勿論そのつもりだ」
力強く頷くガイにカカシは苦笑した。
「だろうね。あやかりたいもんだよ」
「俺が負かすまでお前にも死んで貰っちゃ困る。長生きさせるぞ」
「・・・・ぅわぁ・・・」
執務室の前で立ち止まって、カカシはガイを横目で見た。
「いつまでやらかし続ける気なのよ?気が遠くなるったら・・・」
ノックに答える声がする。
「まあ、お前といると何だか気が軽くなるよ。ガイ」
「うん?そうか?何だかよくわからんが良かったな!」
「フ。そうだね」
執務室のドアを開けて、カカシは笑った。
「ホント良かったよ」
何処の何者でもない忌み血の持ち主が消えても、誰かが表立って声を大にする事はない。
つまりそういう事だ。