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連れ立って歩く 其のニ 砂編 ー干柿鬼鮫ー

第20章 出会い頭


「忘れ物はありませんか」

「・・・ありませんよ」

「気分は悪くありませんね?」

「・・・ないですよ」

「じゃ行きますよ・・・・何ですか、その顔は」

「・・・私は初等科の子供ではありませんよ。何だか先生に引率されて出掛けるようで気が滅入ります。止めて下さい」

「まあ大体そんなようなモノでしょう。今までのあなたを見る限り、引率があった方がよさそうなのはハッキリしてますからね」

「・・・はあ・・・」

ひどい事になっちゃったなの一言が牡蠣殻の顔にクッキリ書いてある。

「宿の者に外套を支度して貰いました。その格好じゃ表は寒いですよ」

ドアに右手をかけ左手に持った麹塵の外套を上げて見せる鬼鮫に、牡蠣殻は感心を通り越した呆れ顔でしみじみする。

「気が利くというか、細やかというか、凄いですねえ、干柿さんは・・・・正直少々鬱陶しい・・・」

「・・・何ですか?」

「ありがとうございます!助かります!」

「よろしい」

部屋のドアを開ける。

奇しくも左隣からも、ドアを開ける音がした。

「おや、お隣さんも出立の様子ですね」

ほうとドア向こうを覗き込もうとした牡蠣殻に、鬼鮫は顔をしかめる。

「ジロジロみるもんでもないでしょう?」

「いや、どんな方が一晩お隣にいらしたのかと思いまして。袖振り合うも多生の縁?」

「・・・・あなた私のときもそんな事言ってましたねえ・・・」

ドアを開いて外に出ると、丁度隣室の客が出で来たところ。

隣同士、互いに顔を見交わす。
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