第15章 左隣
「面倒」
「じゃ寝てろよ。もういいよ。壁は何かで塞いでおくから」
「寝る」
「ああ、寝ろ寝ろ。流石にボクも面倒になって来たぞ」
「ああ?」
「悪かったよ、何でもないよ。頼むから寝てくれ。おやすみ!」
「うむ」
寝台に横たわった海士仁の細長い姿を見やってカブトは溜め息を吐いた。
"勝手に出歩いてずぶ濡れで帰ったと思えばこれだ・・・"
どう扱うべきか、判断に困る。
ともあれ、深水の薫陶を受けていた事に間違いはないし、下手をすると荒浜は本人は元より、師である深水より牡蠣殻の体質に詳しい。自らを被検体にしてまで、微に入り細に入り、牡蠣殻の血を調べ尽くしている。
"・・・確かに馬鹿だ"
カブトは渋い顔をして海士仁から目を反らした。
その海士仁に同類扱いされたのが気に入らない。
けれど、カブトはこの男が嫌いではなかった。
「・・・・まあ、使えないヤツではないしな。連んで損はない・・・」
呟いてカブトは壁のヒビを眺めた。
「・・・・一体隣に何がいるんだ?発情期のバッファローでもいるのか?」