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連れ立って歩く 其のニ 砂編 ー干柿鬼鮫ー

第15章 左隣


見た目と違い、海士仁は気難しい男ではない。
唯、何を考えているのか解り辛いだけだ。

「面白い」

「フ。また君の面白いが始まった」

ゴチャゴチャした卓の上から、検体のサンプルを慎重につまみ上げてカブトは苦笑した。

「今度は何が面白い?荒浜。君を見ていると同じ時間を共有する相手だという事を疑いたくなる。磯という温床から抜けて五年も経っているのに、未だ世間知らずとは恐れ入るよ」

「知らん」

「はは、君にしてみれば普通の事を不思議がられても訳がわからない?そりゃそうか」

「何故宿に検体を?」

「調べたいからさ」

「変わっている」

「まあね。変だよね。不便だし」

「何故?」

「仕方ないんだよ。好き好んで不便な真似をしている訳じゃない」

「雑に扱うな」

「・・・・おっと。ご説ご最も」

カブトは苦笑して手を止めた。

「けど、この検体の載った卓を散らかしたのは君だ。検体があるのは知ってたろ?」

「要らんと思った」

「持ち歩く程度の検体は要らないって事かな?」

「違うか?」

「違うから色々言ってるんだけどな。ボクも潤沢な研究費でそれなりに好きにさせて貰ってるけど、君は比にならない立場にあった・・・いや、今もあるのかな?誰がバックについてるのやら。いずれにせよ、全く甘やかされてるな」

「検体を持ち歩くな」

「わかってる。手が足りないんだ。状況が許せばこんな無茶はしないよ、ボクだって」

「足りぬ?」

「まああまり大っぴらに出来る研究をしてる訳じゃないし、大蛇丸様のお眼鏡に叶う者はなかなかいないからね。自然ボクが忙しくなる」

「出歩くな」

「そりゃラボに居っぱなしで研究してればいいんだろうけどね。牡蠣殻の件は大蛇丸様ではなくボクが主体で動かしてる。じっとばかりもしてられないんだ。どういう訳かこの件に関して大蛇丸様はあまり乗り気ではないようだから・・・」

「退けば良い」

「荒浜は本当にシンプルだな。余計なものがないって感じだ。羨ましいよ」

「知らん」

「はは、要らない事は考えないんだろ。面倒になるとすぐ知らんだからな、君は」

「知らん」

「それでよく根に渡りがつけられたもんだ。あのダンゾウを籠絡するなんて、どんな手妻を使ったんだ?」

「欲が深い」

「・・・・ダンゾウの事?」

「容易だ」

「わからないなあ・・・・」
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