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(R18) Moulin Rouge (HQ)

第9章 xxx 08.遭遇



「俺はイチゴ味が好きだな」

 何がどうしてこうなったのか。
 今日も今日とて殺人的にイケメンな徹くんが、ローション片手にプリンススマイルを披露中である。

 天井近くまで堆く商品が積まれた店内。狭い通路を進んだ奥の、奥の、そのまた奥。

 ラブ玩具や卑猥なコスプレ衣装がひしめきあうアダルトフロアで、私は、及川徹に肩を抱かれていた。

「うわ、バナナ味だって。露骨~」

「そ……そうデスネ」

「これ口にいれても平気なんだってサ」

「へ、へえ、それはすごい」

 視線を明後日のほうに向けて困り果てる。店で会ったならまだしも、箱の外で徹くんに会うのは危険だ。

 思い出すのは坂ノ下食堂からの帰り道。私の住むアパート前での、光太郎との会話。

『及川の枕営業はマジでえげつねえ』
『そんなにひどいの?』
『人間じゃねーよ、あいつ』

 あのチャランポランな光太郎が警戒するほどの相手なのだ。それなりの【前科】があるんだろうし、数々の女性客を傷つけてきたのだろう。

 その刃が、今、私に向けられようとしているらしい。

「カオリちゃんはどれ使ってほしい?」

「ええと……どれ、とは」

「何味になって俺に舐められたいの、って聞いてるの。わかってるクセに言わせるなんて……えっち」

 拝啓どこかへ蒸発したお母さん。
 娘は、絶対絶命のピンチを迎えています。

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