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【恋乱】短編集

第5章 【裏】甘い罰 ~片倉小十郎~


「それも秘密、って言ったら?」

 意地悪に微笑んで、小十郎様は小首をかしげて見せる。

「秘密って言ったら…もう知りません」
 ぷい、と拗ねたようにそう口にしたものの。
 すぐに「冗談です」と言いかけたところで、私は目の前に迫っていた小十郎様の顔に驚いてしまった。
「っ!」

 艶めいた色の滲む瞳に間近から覗き込まれ、「あ」と言葉にならない声を漏らす。
 その瞬間。
 零れ落ちた声ごと飲み込むように、深く口付けられた。
 くすぐるように舌先が触れ合い、口の中をなぞられると背筋がぞくぞくする。

「っ、ん…小十郎、さま…?」

「知らない、なんて…寂しいじゃないか」
 何とか名前を呼んだ私に、小十郎様は唇を触れ合わせたまま吐息混じりにそう囁く。
 それにまた熱を煽られ、かあっと全身が熱くなる。

「違います、冗談で――」
「……うん、知ってる」

 私の下唇を甘噛みしながら、小十郎様がまた囁いてくすくす笑う。
 からかわれたと気づいても、私の体からはすっかり力が抜けていた。

「小十郎様……ずるい、です」
「うん。じゃあ、今度は嘘吐いた罰だ」

 腰を抱きすくめられ、先刻以上に痺れるような口付けで唇を塞がれる。
 あまりにも甘い罰に、私はただ息を切らせながら、しがみつくことしか出来なかった。


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