第12章 貴方が救世主?
「…おっさんの息子は治るのか」
ずっと黙っていたローが口を開いた。
「あぁ、まぁ… 時間はまだかかるが、見込みはある」
「ならコイツに教えてやってくれ」
「…しかし、 」
「コイツがおれの船に乗ったのは最近だ。いろいろあって身寄りのないコイツは、それまで一人でその病と戦ってきた。あんたの息子と同じくらい、コイツは長い間一人で抱えてきたんだ」
「…」
「もう、その苦痛から解放されてもいいだろ…だから、」
頼む、とローは頭を下げた。
「…ロー」
あのトラファルガー・ローがそんな簡単に頭を下げる事に驚いたけど。それはサザーランドさんも同じようで、未だに顔を上げないローを黙ったまま見つめていた。
「…頭を上げてくれ」
一つため息を零したサザーランドさんはローに優しく声をかけた。
ゆっくりと顔を上げた彼は、どことなく思い詰めたような表情で。まるで自分の事かのように、辛そうで。見ていられないくらいに。
「正直、初めて会った君たちに教える義理はない」
「…」
「だけど…君も辛かっただろ?」
私の方に向き直したサザーランドさんの瞳は、とても優しかった。
私は黙って頷く。
すると、彼はフッと笑って。
「僕個人の感情でどうなるか分からないけど…かけあってみるよ」
「!」
「僕の息子も君たちと然程歳は変わらない。まだ長い人生、こんな物で諦めて欲しくないしね」
「…ありがとう!」
私は深々と頭を下げた。
横目で隣に立つローを見れば、彼も安堵のような表情でいて。目が合うと優しく目を細めた。
胸の奥が少しだけきゅう、と鳴った気がする。