第12章 貴方が救世主?
「いやー、すまんね!こんな所でまさかラブシーンが見れるとは思わなくてさ!」
「…もうその話はいいです」
あの後。
斬りかかろうとしたローをなんとか宥め、現れた男性に事情を話せばなんともフレンドリーな人で。
近くに家があるから、と招かれてお風呂まで借りさせてもらった。
「…で、おっさんはなんでこんな所に住んでいるんだ」
私の次にシャワーを浴びたローが、まだ濡れている髪をがしがしとタオルで乾かしながらソファーに腰掛けた。
こんな時でもマイペースというか。まるで自分の家のように振舞う彼に少し尊敬する。
「あァ…元はいろんな土地を転々とする仕事をしていたんだがね。何分歳を取った。隠居生活をしようと此処に辿り着いたんだよ」
「へェ…こんな偏狭な土地にわざわざ」
本当にローは失礼だ。でも、それは否定出来ない。
完全に自給自足な生活。不便極まりないだろう。
「それで、一人で此処に?」
「そうさ。まぁ…本当は一人じゃないんだ。今は離れているが、息子がいる。そいつが戻ってきたら二人で暮らすさ」
「どうして一緒じゃないの?」
「…病気なんだ。生まれつきの。今はちゃんとした所で治療中でね」
「…」
なんか、悪いこと聞いちゃったかな。
さっきまで陽気に話していた顔が一瞬曇った気がした。
「ま!それももうすぐ治る目処がついている。それまでは一人だが、寂しくはないよ」
そう言って再び笑顔を見せた。
無理して笑ってるようには見えないから、それは本当の事なんだと思う。