第11章 彼女の人生を大きく変える出逢いとは
特に濃い内容の会話をすることも無く、ただ二人で森の中を歩いていた。
だが段々薄暗くなって雲が覆ってきたと思ったときにはすでに遅く。グラスの水をひっくり返したように雨が打ちつけてきて、視界が悪くなった。
無理に動くと遭難し兼ねない。とりあえずたまたま見つけた木の窪みで雨宿りする事にした。
「スコールってやつだろう。すぐに止む」
「そうだといいけど。少し身体が冷えたわ」
ふとアクアの身体に目をやる。
浜辺からそのまま来てしまった所為で、彼女は水着のままだ。
そこでおれの思考は一瞬停止した。
濡れた髪、日差しで少し火照った身体、その痩せた体形に似合わない胸の膨らみ、細いくびれ、スラッと伸びた足。
アクアの持つ全てが艶かしい物で。こうも近い距離でそれを目の当たりにすると、正直目のやり場に困る。
――――落ち着け、おれ…
余計なことを考えないように、おれが羽織っていた上着をアクアの肩にかけた。
「ありがとう…でも、今度はローが冷えちゃう」
「おれは平気だ。伊達に鍛えてる訳じゃねェ」
医者が風邪引いたら世話ねェだろ。そう言ってやれば、少し考えたように首を傾げる。
「じゃぁ…」
何か思いついたのか。自分の肩にかかっていたおれの上着を掴みながら、おれとの距離を縮め。
「一緒に入れば、きっとあったかいよね」
大きめの上着に、おれの身体も同じように包まれた。