第2章 お前の心臓、預かっておく
それからは、あっという間だった。
怪しげに口角を上げた女は、腰に差してあった小刀を取り、ほんの数秒で自分の倍以上ある男3人を薙ぎ倒した。
その動きは一切無駄が無く、見事で可憐だった。
男達から吹き出た血飛沫が、まるで舞い散る花弁のように見えてしまう程。
「賞金もかかってない小物海賊が、いい気になってんじゃないわよ」
すでに虫の息になっている男の腹を靴で踏みつける。完全に圧勝だった。
「すげェな嬢ちゃん!」
「まじ強ェ!イカすぜ!」
その場に居合わせた傍観者共が囃し立てる。同時に拍手が店内に響いていた。
「あ、え、まっ、まあね!」
流石に騒ぎの中心になり照れているのか、少しだけ頬を染めた女は、通り過ぎる者達に頭を下げながら、急々と店を出て行った。