第2章 お前の心臓、預かっておく
「キャプテン!お酒垂れてるよ!?」
べポの声で我に返れば顎を伝う冷たい感触。どうやら呆気に取られ過ぎて、口に含む筈の酒をダラダラと垂れ流していた。
おれはそんなの咎め無しに目の前に現れた女を見入る。べポが慌てておれの上着を拭くが、そんなの構いはしない。
だってそうだろ。
夢に出てきた女が、現に存在している。
おれと同じ、藍色の髪の女が。
「あ?なんだテメェ。おれ様に楯突こうってのか?」
「何言ってんのアンタ。頭沸いてんの?」
「なんだとコラ!!」
「あーあー煩い。これだから海賊は嫌いなのよ」
先程まで少女に絡んでいた男達は立ち上がってその女を囲む。
だが、女はそれに怯む気配が微塵にもない。
「海賊をナメんなよ。威勢が良いだけのガキが」
「ふっ、海賊だからって罷り通るような時代だと思わない事ね」
そう鼻であしらうと、女は少女に近付いた。
「もう大丈夫だから、早く店から出な」
「…は、はいっ」
逃げるようにその場から立ち去った少女の姿を見送ると、女は再び男達に向き直す。
「さあ、誰から相手しましょうか?それとも海賊らしく全員で襲ってくるのかしら」
「こんのォ…調子に乗ってんじゃねェぞ!!」