第2章 お前の心臓、預かっておく
「キャプテン、あの子凄いね!」
「あァ…」
本当にあいつは夢に出て来た女なのだろうか。夢の中で見た切なく笑う顔とはかけ離れたその姿に、少しばかり戸惑う。
――――だが、間違いない。そんな偶然あってたまるか。
「行くぞ」
見失わないうちに追わなければ。
立ち上がり勘定を払おうとすると。
「あの子…お代、貰ってない…」
店主が呟いた言葉に、おれとべポは固まった。
「…くくっ、おもしれェ」
「キャプテン?」
べポは不思議そうにおれを見た。
「店主。あの女の分、おれが払ってやる」
「えぇ!キャプテン?!」
「あ、本当かい?悪いねェ」
多めに札束を置き、店を出た。
「珍しいね、キャプテンが知らない人の分まで払うなんて」
「…そうだな」
今日のおれは相当気分が良いらしい。おそらく口角が上がりっぱなしだろう。
「それにしてもあの子、一体何者なんだろう」
「さァな、だが…興味深い」
「あれ、キャプテンも気になっちゃった?」
楽しそうに笑うべポを横目に、持ち合わせていた電伝虫を手に取った。
『…はい 』
「ペンギンか。一つ頼みがある」
『…厄介事ですか?』
「あぁ、どうだろうな。だが、中々おもしれェと思うぜ」
『…それは楽しみです』