第11章 彼女の人生を大きく変える出逢いとは
「良い特等席ね」
聞きなれた声の主は、甲板にいないはずのもので。
首だけ動かせば、船内から出てきたアクアの姿。また少し痩せただろうか。
「具合はどうだ」
「ん、今日は調子良いみたい」
よいしょ、と隣に座り、おれと同じようにベポの腹に身体を委ねたアクア。
「うぅ…流石に二人は重いよー」
「ふふ、ごめんねベポ」
そう言いつつも、アクアはベポの腹に頭を乗せたままで、抱きつくように身体を寄せた。
暑い暑いと言っていたベポは、密着する部分が熱を帯びているというのに、満更嫌そうではない。
きっと彼女が部屋から出てきて自分に構っているのが嬉しいのだろう。
「次の島は近いの?」
「いや、予定ではあと一ヶ月だ」
「そう…次は冬島じゃないといいんだけど」
はぁ、と小さくため息をついた。
流石に続けて体調を崩す事に彼女自身も滅入っているようで。おれは冬島の方が得意だが、アクアの事を思えば夏島の方が幾らかマシかもしれない。ベポには気の毒だがな。