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【外科医】 キミ色に染まる  【完結】

第10章 虚栄心がまるでジェンガのように



「…ねぇ、トラファルガー」
「なんだ」

 食べ終えた食器を机に置いて、トラファルガーに向き直す。

 彼は読んでいた本を閉じ、組んでいた膝の上に置いた。


「私って、思っているより弱い人間だったみたい」
「…」
「トラファルガーの言う通りだった。私なんかが敵うわけないのよ」



 自分を過大評価してたわけじゃない。

 でも、ほんの少しでも勝算があるとは思っていた。

 だけど実際には手も足も出なくて。ずっと倒したかった相手なのに、何も出来なかったのが現実。



「…悔しいよ」


 島の皆の敵討ちをすると誓ったのに。
 なのに…こんなにも虚しい決着だなんて。








「おれが必ず倒す」

 その言葉は、希望に満ちていた。

「お前が果たせなかった野望も全部まとめて、おれがあいつを討つ」
「…トラファルガー…」
「だからお前は、おれの隣で見てろ」

 ――――お前の野望は、おれが背負ってやる。



 どうして、こうも彼は、私の欲しい言葉をくれるんだろう。

 そんなに強い眼差しで射抜かれるように見つめられて、私は、私は…




「…なんだ、随分泣き虫になったんだな」

 そう言って弧を描いた口許で笑う。そして知らぬ間に流れていた私の涙を親指で掬った。

 相変わらずの不敵さには変わらないけど、その瞳の奥は優しいもの。

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