第10章 虚栄心がまるでジェンガのように
喉が苦しい。
ちゃんと息が出来ているのか分からない。
呼吸の仕方を忘れてしまうほど、空気がピリピリとしていて。
私以外の船員達もゴクリと息を飲んだ。
「…何しに来た」
「別にやり合おうって訳じゃないさ…用があって島を渡っていたらこの船が見えてな。懐かしい顔を拝みに来ただけだ…」
相変わらず、不気味な口角に背筋が凍りつく。
「それにしても驚いた…女を作るとは、偉くなったものだなァ」
ドフラミンゴの視線が私に向けられる。サングラスで目は見えない。それが一層この男への恐怖心を煽る。
島を滅ぼされた怒りより、恐怖の方が勝って、足がガクガクと震えだす。
すでに私は感じとってしまった。
この男への絶対的な敗北感を。
私の様子にトラファルガーは気付き、自身の長刀に手をかけ、カチャリという音がした。それを見たドフラミンゴは両手を上げる。
「まァ、そんな殺気立つな…おれは忙しい。またゆっくり思い出話でもしようじゃねェか」
「誰がてめェなんかと…!」
「フフッ…じゃあな」
何の能力者なのか。
ドフラミンゴは軽々と宙へ浮かび、文字通り翔けて行った。