第10章 虚栄心がまるでジェンガのように
本当は、雪が好き。しんしんと降るのも、一面積もった銀世界も。
なのに冬を受け付けない私の身体。それが悔しくてしかたない。
これも、私の運命なのか。
――――ざわっ
何やら辺りが騒がしい。
銃声や叫び声が聞こえた訳ではないけれど、何かざわついている気がした。
常に身の安全の為に、周りに気を張っていた頃の名残。
道行く人達の会話に耳を傾けた。
「まさか……が、この島に…」
「残虐なやつ……何しに来たんだ」
会話の内容からして、この島に私の乗るハートの海賊団が来た事だろうか。
でも三日前には着いていたと言っていたし、彼らは物質を調達に既に島へ下りていたはず。今更そんな噂を立てるのもおかしい話。
――――違う海賊が…?
下手をしたら戦いになるかもしれない。
そう思うと居ても立ってもいられなくて、まだ店から出てこない二人を背に、足早に船の方へ戻る。
私はハートの海賊団の一員でも無いのに。彼らにもしもの事があったら、なんて柄にも無く心が騒ぐ。
きっとトラファルガーが知ったら「余計な心配するな」と咎められてしまうのだろうけど。
とにかく、船の姿が確認出来るまでガムシャラに走った。