第10章 虚栄心がまるでジェンガのように
「はぁ…」
今日は何度ため息をついただろうか。
思い返そうとしてもキリが無いことに気付き止める。
ただ、その原因だけは分かる。
「アクア!次はこっちな!」
「おい、それはない。こっちの方が良い」
「完全にペンギンの趣味だろ、がっつり胸元開いたやつ」
「お前こそヒラヒラもんばっかじゃねェか」
着せ替え人形の私、再び。
トラファルガーから下船の許可が下りて、ペンギンとシャチと街を歩く。
特に行く宛もなく、彼らは私の必要な日常品の買い物に付き合ってくれていた。
どうやらそれが間違いだったようで。
気付けば、女物の店で私に合う服を選ぶ筈が、互いの好みの違いで攻防戦が始まっていた。
当然、女しかいない店内で、そんな気持ち悪い争いは目立つ。
周りの女性達が怪訝な目を向けてくる中、私は仲間だと思われたくなくて、少し離れた所から見ていた。
冬島に来るのは久々だ。
自分の身体の事を考え、あまり近付かないようにしていた。
だけど、全てを避けられる訳ではなくて。こうして止む負えず冬島に辿り着けば、決まって体調を崩す自分を責めた。
「私、外にいるから」
未だ譲れない戦いをしている二人にそう告げ、店を出た。