第9章 言葉では伝えきれない想い
「アクア」
彼女の名を呼べば、釣竿を持ったまま振り向く。
「島に下りたいか?」
そう言うと、目を丸くする。そして少し口角を上げ、頷いた。
「船長、いいんですか?」
「あァ…ペンギン、シャチ。お前らついていってくれ」
了解!と大げさに敬礼した二人に口角を上げれば、視界に映ったのは少し眉を下げたアクアの顔。
「…トラファルガーは?」
「おれはベポと行くところがある」
「…そう」
なんだ、その顔は。
あれほどおれに恨めしい目を向けていたくせに。
おれが一緒じゃないと聞いて、少しばかり寂しげな表情をしたように見えたのはおれの思い込みなのか。
…そんな訳ない。
「ベポ、行くぞ」
「アイアイキャプテーン!おれ上着取ってくるね!」
縁から軽やかに飛び降りたベポは、足早に船内に入っていく。
おれも一度部屋に戻ろうと、ベポの後を追った。