第8章 荒れていた心に滲んでいく優しい光
「…あの、」
「別にお前の覚悟が温いなんて思っていねェよ」
トラファルガーの声に、私は顔を上げた。隈の濃いトラファルガーの瞳に、私の姿が捕えられる。
「ただ、お前があの男のために死ぬ事が許せねェんだ。あんなやつの為に自分を犠牲にするなんて言うんじゃねェ」
その言葉は優しさに溢れていた。
その想いに気付かずに、私が吐いた暴言はなんて酷く哀しいものだろう。
彼はこんなにも私の事を考えてくれていたのに。
「…ごめん、なさい」
それ以外何も言えなくて。自分の浅はかな行動をこんなにも悔やんだ事は一度もない。
「謝らなくていい。お前は間違った事は言ってねェよ」
「でも…っ、」
「だったらもう簡単に死ぬなんて言うな」
そっと伸ばした掌で、私の頭を撫でるトラファルガーの瞳があまりにも優しくて。私は小さく頷いた。
今まで見た事ない穏やかなその顔に、微かに胸が鳴る。そんな事、認めたくないけど。
でも、トラファルガーだけじゃなくて。ベポもペンギンもシャチも、優しく笑っていた。誰も私の事を責めずに、ただ笑っていた。
この気持ちをなんて言えばいいのか、言葉足らずな私にはわからないけど。
鼻の置くがツンとしたのは何時ぶりだろう。
【荒れていた心に滲んでいく優しい光】