第8章 荒れていた心に滲んでいく優しい光
「“北の海”出身なら、フレバンスという国を知っているだろう?」
「えぇ、“白い町”の事でしょ?確か白鉛病っていう伝染病に冒されて、王国自体が滅亡したって…」
「あァ…そこは船長生まれた土地、故郷だ」
「…!」
「少し、境遇が似ているな。船長もその国の唯一の生き残りなのさ」
フレバンス。
通称“白い町”と呼ばれていたその国が滅亡した時、私は産まれたばかりであまり詳しい事は知らない。
だけど近所のおばさん達が時々その話題になっているのを聞いて、少しだけ興味を思って調べた事がある。
その本には国民全員が白鉛病に冒され、政府によって排除されたと。
酷い話だと思った事は覚えている。
「原因は違うが、あの人も故郷を無くした。親も、友も全て」
「…じゃあ、トラファルガーも…」
「あの人も…おれ達に逢うまでは孤独だったんだ」
「…っ」
何も知らない事が、こんなにも残酷だなんて知らなかった。