第8章 荒れていた心に滲んでいく優しい光
彼には信頼し合える仲間がいる。
辛い時にはきっと支えてくれていたんだろう。同じ痛みを味わって、同じ夢を見て。
だけど…私には誰もいなかった。
支えてくれる人も、信頼も絆も、愛情を注いでくれる人も。
ずっと孤独だった。一人でそれを抱えて生きてきた。
今までも、これからもそうやって生きていく。
“死なせねェよ”
“おれはお前を見捨てたりしない”
なのに。それなのに。
私は出逢ってしまった。
優しく笑いかけてくれる人たちに。
死なせないと、見捨てないと言ってくれる人に。
守るものも、大切だと思うものも無かったから、命を賭けてあの男を倒そうと心に決められたのに。
私は再び知ってしまった。
人の温かさと、一人じゃないという安心感を。
「…だから、誰とも馴れ合いたくなかったのよ…」
誰に向けたでも無く呟いた言葉は、白い吐息と共に宙を舞って消えた。