第7章 こんな状況でさえ、流れる涙が無い
「おれ知ってる、その島…新聞に載ってた」
「あァ、おれも見た…確か島民全滅だって…」
その記事は私も覚えている。
全員死んだと書かれていた。
確かに、あの惨劇を目の当たりにすれば、当時七歳だった少女が生き残っているなんて誰も思わなかっただろう。私も私で、わざわざ生き残りです、なんて訂正を求めなかったし。
「同じ海だと覚えているものなのね」
十年も前の話。
てっきり関わりのない人達には風化されていると思っていたから、こうして覚えている人がいる事が少しだけ嬉しく思う。
私の島は、まだ忘れられていない、と。
だけど私の想いとは別に、彼らは黙ったまま。
島が無くなった事は悲しいけど、この人たちが思い悩む事では無い筈なのに、何故?
「…お前、犯人はわからねェって言ってたよな」
やっとトラファルガーの口が開く。
私は、世間的にはね、と答えた。