• テキストサイズ

【外科医】 キミ色に染まる  【完結】

第1章 夢の中よりも軽やかに笑った



「目指してた島に早く着いたんだ。大した事はないんだけど、街があるからキャプテンも行くかなって」
「そうか。分かった、支度する」
「アイアイ!じゃあ甲板で待ってるね!」

 久々の島に気分が舞い上がってるのか。巨体には似合わない軽やかな足取りでべポは部屋を出て行った。



 おれは特に急ぐ事もなく洗面所に向かい、冷たい水を顔に押し当て、大きく息を吸った。

 鏡に映る自分は、前より隈が濃くなった気がする。あの女に睡眠の妨害を受けているせいか。自分の容姿を気にするような柄ではないが、不健康そのものの顔にため息をついた。


 次に出てきたら、せめて夢の中で文句を言ってやろう。

 なんて強がってみても、また会えると期待している自分の顔は、自然と口角が上がっていた。





 いつの間にかおれは、その傍迷惑な女に今まで持った事のない感情を抱いていたようだ。

 まさかこのおれが、なんて思うにも否定出来ない想いを。
 会った事もない、夢の中の女に。


「報われない、か…」


 自嘲気味に笑い、帽子を深く被って部屋を出た。



/ 184ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp