第4章 愛しいだなんて、柄に無く思った
「失礼します」
ノックの後に部屋に入ってきたペンギンは、アクアの姿を見つけて小さくため息をついた。
それに気付いたアクアは本から目線を上げ、「何か文句でも?」とペンギンを睨む。
ペンギンは「たまには甲板に出てみれば?」と声を掛けるが、彼女は特に返事もせず再び本に目を戻した。ペンギンはそれを見て最早恒例のため息をつくと、おれに向き直した。
「船長、あと一時間くらいで島に着くと思われます。海図によれば次は春島で治安もそれほど悪くない、所謂観光名所というところです」
「そうか、分かった。買出しの役振りはお前に任せる。残りは自由行動で良い」
「御意。とりあえず自分はどのくらいでログが貯まるか調べます」
要件を伝え終わったペンギンはもう一度アクアを見た。しかし彼女はペンギンを見ることもなく、本を眺めるだけ。
そんなアクアから視線を外し、おれに苦笑いを向けたペンギンは。
「…次の島、桜の名所らしいですよ。運がよければ、満開かもしれませんね」
淡々とそう述べ、部屋を出て行った。