第4章 愛しいだなんて、柄に無く思った
何かを抱えているとは思っていたが。
彼女が独りで背負うものは、あまりにも重過ぎていた。
「また此処にいるのか」
「…何処にいようと私の勝手でしょう」
部屋に戻れば、いつものようにアクアはベッドの上で本を読んでいた。
きっと興味はないだろうが、読書は好きなのかおれの医学書を読み漁っている。相変わらず、仏頂面で。
アクアは必要以上に部屋を出ない。食事の時と、与えた仕事の洗濯以外は部屋に籠りっきりだ。
“嫌いな海賊”と馴れ合いたくない、分かりやすくて良いが。それにそっちの方がおれの監視の目も届きやすくて内心助かる。
アクアがこの船に乗って早二週間。
もうすぐ次の島に着く頃だ。
彼女もそれを知っていて、逃げ出すチャンスにもなる。
だがそんな気配を微塵にも見せない。
何か企てているのか、逃げられないと諦めているのか。それとも、この船に乗っていれば例の復讐の相手に辿り着くと利用をしているのか。
どちらにしても、おれはこの女を手離す気なんて更々無いが。