第3章 もう涙は枯れ果てた
「…それで海賊が嫌い、か」
哀れむような目を、その場の全員が私に向ける。
別に同情なんてしてほしい訳じゃない。そんなもの貰ったってどうにもならないから。
「じゃあ、お前はその海賊に復讐する為に旅をしてるのか?」
「えぇ、単純でしょ?」
そうする事しか、家族と島を失った私には生きる道が無い。
復讐なんて大袈裟だけど、一矢報いてやりたい。ただそれだけ。
「…そいつの名は」
ずっと口を閉じたまま私を見つめていたトラファルガーが口を開いた。何か思いつめたような瞳で。
「…確信が無いから言わない。ただ“偉大なる航路”を進んでいけば、何処かで会える気がするの」
――――これが私の宿命ならね。
船員達の視線に耐えられなくなって、逃げるように食堂を出た。
コイツらに何かが出来るとは思わないし、してもらうつもりもない。
私は私の道を行くだけ、誰の手も借りない。
島を出てから十年、ずっと独りで生きてきた。
もしその過程で命を落としたとしたら、それも私の宿命。その海賊に会って、戦って負けたとしても、それも。
大丈夫。私は独りでも大丈夫なんだから。
大切な人も、守るべきものも何も要らない。
もうあんな思いしたくない。
ただ、あの男を倒したい。
それだけの為にこれからも生きていく。
【もう涙は枯れ果てた】