第3章 もう涙は枯れ果てた
忘れるに忘れられない、忌々しい記憶。
私の故郷は、獰猛な動物は多かったけど被害は然程酷くなくて、それさえなければ平凡な島だった。
父も母も兄も、島民皆が優しくて幸せだった。
なのに、突然現れた脅威。
何の前触れも無くやってきたソイツらは、島の財宝全て寄こせと条件を突き出し、それを拒否した島民たちに腹を立て、皆殺しにした。
“ここに居なさい!”
“絶対に出ちゃダメだ!”
当時七歳だった私は、両親に隠れていろとクローゼットの中に無理矢理入れられ、鍵をかけられた。その中で一人、銃声が鳴り止むまで声を堪えて泣いた。
そこでどのくらい経ったのかは覚えていない。
ただ、騒ぎが無くなり、なんとか鍵を壊して外に出た。
其処に広がっていたのは地獄絵図。
世話をしてくれた島民、仲の良かった友、大好きな家族皆、血塗れで倒れていた。
身体を揺すっても、誰一人反応が無くて。まるで血の海と化した島を、大声を上げて泣きながら走った。
そして、港に着くと見知らぬ船を見つけた。
あれは海賊旗、海賊のマーク。ニヤリとあざ笑うようなそのマークに鳥肌が立ったのを今でも覚えている。
その船の海賊たちは私に気付く事なく、碇を上げ水平線へ消えていった。