第3章 もう涙は枯れ果てた
「なんだ、すっかり馴染んでいるようだな」
暫く船員達と会話していると、嫌気の差す声がして。首だけで振り返れば、不機嫌とも言える表情のトラファルガーがコーヒーカップを持って私の隣に座った。
さも当たり前のようにするものだから、私は少しだけイスをずらして彼との距離を空ける。
トラファルガーの眉間のシワが一層濃くなったけど、気にしない。
「珍しいッスね、船長がこんな時間に起きてくるのは…て、その頬どうしたんですか?」
「…部屋に猫が出てな」
「はあ…?」
シャチが突っ込みも入れたくなるトラファルガーの頬にはくっきりとまだ赤みを帯びている三本線。
昨日突然奪われた唇に思わず、私の爪が彼の頬を引っかいたものだ。
当然の報いだと思う。私は何も悪くないもんね。
「でさ、結局アクアはなんで海賊が嫌いなの?」
食後のコーヒーを貰い少し落ち着いている所に、ベポが尋ねてきた。
「まぁ、言いたくないなら無理して答える事もないぞ」
ペンギンは気遣いの言葉を繋げる。うん、この人だけは人格者なんだと思う。
「…子供の頃、住んでいた島が海賊に襲われて、島は壊滅。家族は皆殺された。それだけよ」