第3章 もう涙は枯れ果てた
「ようこそ、ハートの海賊団へ。歓迎しよう」
「…それはそれは、お気遣い無く」
もういいや、どう足掻いても今はこの男から逃がれられる気がしない。そのうち何処かの島に着いた時に、隙を見て逃げ出そう。
なんて悠長に考えていたら。
「そうだ、折角捕まえた獲物を逃す訳にはいかねェからな、お前が寝ている間に“それ”付けさせてもらった」
「…“それ”?」
彼が手を伸ばし、私の耳に触れる。
すると、さっきまで何も感じていなかったのに急に冷たい感触と僅かな重みが伝わった。
近くにあった姿鏡で自分の耳を確かめれば。
「ななな!なによこれ!」
憎たらしく笑う彼と同じ、二連の金のピアスが私の耳に嵌めてあった。慌てて外そうとしても、キャッチャーが固くてぴくりともしない。
「それは特殊なピアスで、二度と外れる事はねェよ。お前の耳が千切れない限りな」
「ふざけんなっ!取れないじゃない!」
「取れねェようにしてんだよ。付け足せば、その金は動物のみに解る匂いがするらしい。だからお前が何処にいようが、うちの白クマが探し出せるって寸法だ」
ニヤっと笑う男を、本気で殴ってやろうかと思う。
きっと勝てる筈無いのだろうけど。やられっぱなしにも程がある。