第3章 もう涙は枯れ果てた
「…まさか」
もう一度目を凝らして、ゆっくりと窓に近づいた。
普通、船から見える景色は、海、空、太陽。なのにこの窓から広がるのは、色とりどりの魚と珊瑚礁。
うん、可笑しい。そんなもの見えるはずがない。
暫く考えて思考回路が行き着いた結果は。
「せ、潜水艦…?!」
私の今乗っている船が、海中を進んでいるという事。
「正解、よく出来ました」
相変わらず不敵に口角を上げる男。
どうりで余裕かましてるワケね。海中なら私に逃げ場は無い。
「最低、誘拐犯、有り得ない」
「そうだな、海賊だからな」
海賊だからって許されるのだろうか。
いや、許されるのだろう。だって海賊なんだから。
言いたい事は沢山有る筈なのに、私は諦めて再びベッドに腰かけた。隣に座る男の顔が見れないくらい、悔しくて仕方ない。