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【外科医】 キミ色に染まる  【完結】

第24章 キミ色に染まる



“…アンタ、バカなの?”

 初めは、なんて威勢の良い女だと思った。


“好きな物はサンドイッチ、嫌いな物は海賊”

 怖いもの知らずで、弱みなんて見せない。
 人を、人との関りを拒絶しているような人間だった。

 だが、そんな姿におれは惹かれた。
 こいつが隠している何かを、知りたいを思った。

 その痛みを分かってやりたいとも。


“あんたと私を一緒にしないで!!”
“分かった風な口をきくな!!”

 その痛みの根源を知った時、罵声を浴びたのに苛立つ事はなかった。
 逆におれはその時、「こいつの事を一番分かってやれるのはおれしかいない」と確証したんだ。

 時間がかかってでも、彼女を深い闇から引き摺り出してやろうと。


“…よく見ればキレイな顔立ちしてるのね”

 彼女に初めて拒否をされなかったあの日。正直おれは舞い上がっていたと思う。


“私って、思っているより弱い人間だったみたい”
“…悔しいよ”

 彼女が自分の弱みを見せる度に、彼女の心の中におれは存在している気がして。


“…いろいろと…、ありがとう”

 少しずつ、笑顔を見せる彼女に満足していた。
 おれの船に馴染んでいく事を嬉しく思っていた。


“好きよ、ロー”

 心も体も手に入れた時。あの時間が永遠に続けばいいとさえ思うほど、おれは溺れていたんだと思う。




 だから、真っ赤に染まった光景から目を逸らしてしまった。

 目の前に広がるものは夢で、幻だと。


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