第24章 キミ色に染まる
有無も言わさせないままベポに担がれ、着いたのは森と隣接した海岸が見える、一面白に包まれた砂浜。
砂浜が白いのか、雪が積もっているから白いのかわからないが、その場に下ろされたおれは辺りを見回した。
特に変わった様子はない。誰かがいる気配もしない。
なのに何故、ベポはこんな所に…
「おい、ベポ。一体どうした」
ベポの方へ顔を向ければ、未だに鼻を鳴らし何かの匂いを嗅ぎつけているようだった。おれの言葉なんて聞こえている素振りは見えない。
…仕方ない、好きにさせてやろう。
一つ深いため息を零し、とりあえず近くにあった岩の雪を払いのけ腰かけた。
一か月前、もうすぐ治療が終わりそうだとサボから連絡が入った。
何故本人からじゃねェのかと尋ねれば、薬を変えたらそれが合わなかったらしく、喉が腫れてしまったのだと言う。
しかしその腫れは言わば風邪の症状みたいなもののようで、数日あれば治まるだろうとも言っていた。
腫れがひいたら本人から連絡させるとも。
あれから大分経った。
特に何の音沙汰もないのは、きっと無事に治療が終わったのだろう。
しかし、依然あいつから連絡は来ていない。
病は治ったのだろうが、まだ喉の腫れがひかないのかもしれないと、おれからも連絡はしなかった。
一度だけベポが気になって、こっそりと連絡をしたらしいのだが、その時はまだ話せない状態だと断られたらしい。
治療に専念しろと言ったのに、きっと無理をしたんだろう。
「世話のかかる女だな、まったく」
ベポには聞こえないように、そう呟いた。
「それって、誰の事かしら?」