第23章 脈打つ度に貴方を感じる
それは確かに脈を打っていて、生々しく感じた。
誰の?なんて野暮なことは聞かなくったって、これの持ち主はあの人しかいない。
「おれの心臓をお前に預ける!」
「…ロー、」
「無くすんじゃねェぞ」
「…っ」
「必ず返しに来い!」
「……はい!」
もう我慢なんて出来なくて。
体裁とかプライドとかどうだっていいくらいにボロボロと涙を流してそう返した。
「…行くぞ!」
「アイアイ!キャプテン!」
ローの一言でクルーたちは私に敬礼して、出港準備のために慌ただしく船内へ入って行く。
ベポとシャチは最後まで手を振っていて、ペンギンは帽子を取って一礼してくれた。
ローは…振り返らずに船内に入って行く。
最後まで彼らしい背中だった。
そして全員が船内に入ると、大きな音を立て海中へ潜っていく黄色い船。
私はそれが見えなくなるまで見つめていた。
「素敵なプロポーズだ」
「…えぇ」
「彼らのためにも治そう。我々も全力を尽くすよ」
「…はい」
どうか皆無事でいて。
私はあなたたちの航海を祈ることしか出来ないけど。
ずっとずっと同じ空の下で願っているから。
「貴方の心臓は、私が守る」
ローの心臓が入ったケースを優しく抱きしめた。
【脈打つ度に貴方を感じる】