第3章 もう涙は枯れ果てた
なんだろう、この感じ。
ふわふわして、でも温かくて。
それはずっと欲しかったもののような気がする。
微かな胸の痛みに目を覚ました。
薄らボヤけた視界に飛び込んできたのは、見慣れぬ天井。まだ機能しきれていない脳に鞭打ち、フル回転させる。
「…………あぁ!!」
瞬間、脳裏に浮かんだのは忌々しい不敵な笑み。
思い出した。
若い海賊に絡まれてお金を請求された上に、自分の仲間になれとか言って、その右手で私の心臓辺りを貫かれて。
焦って自分の胸を触ろうとする。
だけど、今こうして生きているという事は、特に問題が無いのだろうと上げた腕を下ろした。
しん、と静まり返った部屋。布が擦れる音を鳴らして身体を起こした。